日本の空き家は900万2千戸に達した。ただし、その数字をそのまま「放置された家が900万戸」と読むのは正確ではない。

総務省統計局の2023年住宅・土地統計調査では、空き家は用途によって分けられている。賃貸用や売却用として市場に出ている住宅、別荘などの二次的住宅を除くと、残るのは385万6千戸だ。空き家問題の規模を考える出発点は、900万戸という総数より「どの種類が、なぜ空いているか」を分けることにある。

この記事でわかること:900万2千戸の内訳、賃貸・売却用などを除く385万6千戸が意味すること、総空き家率13.8%と問題区分の比率5.9%を混同しない読み方。

900万2千戸を四つに分けると、見える課題が変わる

2023年10月1日時点の空き家は900万2千戸、総住宅数に占める割合は13.8%だった。内訳は、賃貸用443万6千戸、売却用32万7千戸、二次的住宅38万4千戸、そして賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家385万6千戸である。表示単位未満の四捨五入があるため、内訳の合計と総数はわずかに一致しない。

賃貸用は、新築・中古を問わず貸すために空いている住宅、売却用は売るために空いている住宅を指す。二次的住宅には、普段は住まない別荘だけでなく、残業時などに時々寝泊まりする住宅も含まれる。いずれも居住者がいない時点では空き家だが、少なくとも統計上は用途の手掛かりがある。

総数900万2千戸を分母にすると、賃貸用は49.3%、売却用は3.6%、二次的住宅は4.3%、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家は42.8%になる。半分近くは賃貸用であり、空室が直ちに管理不全を意味するわけではない。他方で、最後の区分も空き家全体の4割を超える。「空き家は市場に出ている住宅が中心」とも、「ほとんどが廃屋」とも言えず、二つの性格が同時に存在していることが、この内訳から分かる。

日本の空き家900.2万戸を4種類に分けたグラフ

計算すると、385万6千戸は空き家全体の42.8%に当たる。残りの約57%を「問題ではない」と断定することはできないが、対策の入口が同じではないことは明らかだ。

ここでいう「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は、転勤や入院で長期不在の住宅、建て替えのために取り壊す予定の住宅、種類の判断が難しい住宅を含む。したがって、385万6千戸をそのまま「危険な廃屋の数」と置き換えることもできない。統計局は、いわゆる廃屋を住宅として数えない点にも注意が必要だ。

増えたのは総数だけではない――30年で約2.6倍になった区分

空き家総数は1993年の447万6千戸から、2023年には900万2千戸へ増えた。30年間で約2.0倍である。同じ期間に、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家は148万8千戸から385万6千戸へ増え、約2.6倍になった。

つまり、総数が増えたというだけでなく、用途を特定しにくく、通常の市場の回転だけでは動かしにくい可能性がある区分の伸びがより大きい。2018年から2023年の5年間に限っても、空き家総数は51万3千戸増え、この区分は36万9千戸増えた。空き家問題を長期の住宅余剰として読むなら、総数の増減とこの区分の増減を並べて見る必要がある。

1978年から2023年までの空き家総数と問題区分の推移

ただし、時系列には比較上の注意もある。1978年から1998年までの統計では「賃貸用の空き家」に売却用も含まれているため、賃貸用と売却用を細かく比べるなら2003年以降の系列で見るのが安全だ。一方、総数と「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」の長期推移は、同じ表で確認できる。

増加率の違いは、すぐに原因を一つへ絞る根拠ではない。人口減少、相続、転居、住宅の老朽化、新築供給、地域ごとの需給などが重なった結果である。ただ、通常の賃貸・売却・二次利用として分類されない区分の増加が総数の増加より速いなら、物件を掲載するだけでは動かない住宅が増えている可能性は意識すべきだ。統計は原因を証明しないが、次に確認すべき場所を示している。

日本人人口の減少を整理した記事と重ねると、住宅だけが機械的に減るわけではない一方、住む人や世帯の配置が変わる地域では、既存住宅を次の利用者へ渡す難しさが増すことが分かる。東京一極集中の最新動向も、需要が強い場所と弱い場所を全国平均だけで均してはいけない理由を示している。

13.8%と5.9%は、どちらも正しいが答える問いが違う

総空き家率13.8%は、全ての空き家を総住宅数で割った値である。住宅市場で次の入居者や買い手を探している住宅、別荘も含むため、「住宅ストックのうち居住者がいない住宅はどの程度か」という問いへの答えになる。

これに対し、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家の比率は5.9%である。こちらは、通常の募集・売却・別荘利用として説明できない区分が、全住宅にどの程度あるかを見る数字だ。13.8%を危険住宅の比率として使うのも、5.9%だけを空き家問題の全てとして使うのも、どちらも問いと数字を取り違えている。

二つの割合は分母が同じでも、分子が違う。13.8%は住宅ストックの利用状況を広くみる数字、5.9%はその中で利用目的が整理されていない区分の大きさをみる数字である。地域の空き家対策を考えるとき、前者だけなら賃貸住宅の供給過多や季節利用の住宅も混ざる。後者だけなら、募集しているのに借り手がつかない住宅や、売却を諦めた住宅の課題を見落とす。対策の対象を決める前に、何を分子にした割合かを確認することが必要だ。

さらに、2023年の総住宅数は6504万7千戸、総世帯数は5621万5千世帯で、差は約883万戸だった。1世帯当たり住宅数は1.16戸で、2013年以降は同水準である。これは空き家数と単純に一致する差ではないが、世帯数より住宅数が多い状態では、転居・募集・売却の過程で一定の空室が生じることを示す。空き家をゼロにすること自体を目標にすると、必要な市場の空室まで問題視してしまう。

全国平均の13.8%だけで自治体を評価するのも危うい。賃貸住宅が多い都市、別荘地、人口減少が進む地域では内訳が異なるため、地域比較では空き家の種類、住宅の状態、需要を別々に確認する必要がある。

同じ空き家対策を900万戸に配らないための三つの入口

数字を分ける意味は、対策も分けられることにある。第一に、賃貸用・売却用の住宅は、物件情報、改修費、契約上の不安などが取引を妨げている場合がある。ここでは状態や費用を見える化し、借り手・買い手へつなぐ仕組みが中心になる。

第二に、相続後や長期不在で用途が決まらない住宅は、所有者が利用方針を決める前の段階で止まりやすい。相続登記、相談窓口、管理の引継ぎなど、利用・売却・解体を選ぶ前に必要な情報整理が課題になる。

ここで重要なのは、統計の区分を施策の名簿と取り違えないことだ。「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」には、長期不在や取り壊し予定の住宅に加え、種類を判断できない住宅も含まれる。実際に利用できる物件、改修費が大きい物件、権利関係の整理が必要な物件を、この全国値だけで分けることはできない。自治体が実行段階へ進むには、所有者意向、建物状態、周辺の需要を別の実態調査で重ねる必要がある。

第三に、老朽化や立地のため再利用が難しい住宅は、賃貸化だけでは解けない。安全管理、除却、跡地の利用まで含めた判断が必要になる。これは統計から直接、各住宅の状態を判定したものではなく、区分ごとに意思決定の段階が違うという編集上の整理である。「900万戸を一律に減らす」より、空いている理由ごとに次の行き先を設計する方が、数字に沿った対策になる。

見出しの大きな数字を見たら、①総数、②種類別内訳、③総住宅数に占める比率、④比較する年の定義、の四つを確認すると読み違いを減らせる。

この統計だけでは分からないこと

住宅・土地統計調査は、2023年10月1日現在の実態を把握する統計で、確報集計では建物に関する調査票に加え、世帯に配布した約340万枚の調査票などを用いている。全国の構造を読むには重要な基礎資料だが、一戸ごとの危険度、所有者の意思、直ちに賃貸・売却できる状態かまでは、この全国値だけでは分からない。

また、空き家の種類の判断が困難な住宅も「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」に含まれる。385万6千戸を問題の中心として注目する理由はあるが、全てを放置・老朽化・管理不全と決めつける根拠にはならない。個別の施策や地域比較では、自治体の実態調査、建物の状態、需要の有無を重ねる必要がある。

全国値は、問題の大きさを伝えるには強いが、優先順位をそのまま決めるには粗い。空室の多い都市部では賃貸用の比重が高い可能性があり、別荘地では二次的住宅が混ざりうる。反対に、需要が薄く所有者が遠方にいる地域では、数が少なくても管理や除却の負担が大きい場合がある。空き家率の順位だけでなく、種類・状態・需要をそろえて初めて「何を急ぐべきか」を比べられる

まとめ:空き家問題は「数」より「中身」と「行き先」で読む

2023年の空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%で過去最高だった。一方、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家は385万6千戸、総住宅数に対する比率は5.9%である。1993年から2023年にかけて、この区分は約2.6倍に増えた。

この数字は、空き家を軽く見てよいという結論ではない。むしろ、募集・売却中の住宅、時々使う住宅、利用方針が決まらない住宅を一つの数字に混ぜないことが、実効性のある議論の前提になる。何戸あるかに加えて、なぜ空き、次に誰がどう使えるのかまで問うことが重要だ。

データソース:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」

出典・参考資料
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