2026年3月の企業向けサービス価格指数は前年比3.1%上昇しました。国際運輸を除くと2.8%上昇で、海運市況の影響を外してもサービス価格は上向いています。ただし、総平均の加速には外航貨物輸送の急騰が大きく、国内コストと分けて読む必要があります。

日本銀行が公表した2026年3月の企業向けサービス価格指数は113.5(2020年平均=100)で、前年同月比3.1%、前月比1.2%上昇しました。2月の前年比2.7%から0.4ポイント加速しています。

一方、国際運輸を除く総平均は112.9で、前年比2.8%、前月比1.0%上昇でした。総平均3.1%のうち、国際運輸の影響を除いても2%台後半の上昇が残ります。海運だけの特殊要因でも、国内サービスだけの一様な値上げでもありません。

総平均と「国際運輸を除く指数」の差

2025年3月は総平均、国際運輸を除く総平均とも前年比3.4%でした。その後は2%台後半から3%台前半で推移し、2026年2月はいずれも2.7%です。3月に総平均が3.1%へ上がる一方、除く指数は2.8%にとどまり、差が0.3ポイントに広がりました。

2025年3月から2026年3月までの企業向けサービス価格について総平均と国際運輸を除く総平均の前年比を比較した折れ線グラフ

国際運輸のウエイトは7.5で、総平均1,000の0.75%です。それでも国際運輸の前年比は34.9%、外航貨物輸送は42.1%上昇し、総平均の変化を押し上げました。ウエイトが小さくても、伸び率が極端に大きいと全体へ影響します。

指数のウエイトは、企業が購入するサービスの全体を1,000として各品目の比重を置いたものだ。したがって、42.1%という外航貨物輸送の大きな伸びだけを見て、企業のサービス調達全体が同じ率で上がったと読むのは誤りになる。一方で、国際運輸を除く指数が2.8%上昇しているため、「国際運輸だけを外せば上昇圧力は消える」とも言えない。

二つの指数の0.3ポイント差は、国際運輸を含むかどうかで見える当月の上振れを示す。これは国際運輸の寄与を厳密にそのまま0.3ポイントと断定する数字ではない。指数の集計・品目構成や丸めもあるためだ。ここで確認できるのは、総平均の加速を読む際には、全体3.1%と除く指数2.8%を併記した方が、海外運賃の影響を過大評価も過小評価もしにくい、という点である。

**国際運輸とは:**国際航空旅客、外航貨物、外航タンカー、国際航空貨物、国際郵便の5品目です。為替や海外運賃の変動を受けやすいため、国内サービスの基調を見るときは除く指数を併記します。

外航貨物42.1%が加速を主導した

運輸・郵便の大類別は前年比4.5%上昇しました。内訳では外航貨物輸送42.1%、国際航空貨物11.9%、国際航空旅客8.2%が高い伸びです。国内航空旅客も4.2%、道路貨物輸送も3.0%上がりました。

3月の加速は、国際運輸の急騰が主導しつつ、国内物流にも値上がりが残る二層構造です。総平均だけなら国内サービス全体の再加速に見え、除く指数だけなら海外要因を見落とします。二つを並べて初めて構造が見えます。

運輸・郵便の大類別はウエイト161.7で、前年比4.5%上昇した。外航貨物輸送のウエイトは5.6にとどまるが、前年比42.1%、前月比29.6%と変動が非常に大きい。対して道路貨物輸送はウエイト65.9、前年比3.0%、前月比0.4%である。後者は伸び率こそ小さいが、企業が日常的に利用する国内物流として比重が大きい。一時的な海外運賃の跳ねと、より広い国内コストの上昇を、同じ「運輸」で一括りにしないことが必要だ。

宿泊・派遣・ITにも上昇が広がる

国際運輸以外では、宿泊サービスが前年比10.5%、土木建築サービス5.2%、ソフトウェア開発4.0%、建物サービス3.4%、労働者派遣サービス2.9%でした。リースは3.3%、レンタルは1.9%上昇しています。

2026年3月の企業向けサービス価格について国際運輸、外航貨物、宿泊、土木建築、ソフトウェア、派遣などの前年比を比較したグラフ

企業が購入するサービスには、人件費の比重が高いものが多くあります。2025年度の高人件費率サービスは前年比3.2%上昇しました。燃料や為替が落ち着いても、人件費と人手不足を背景にした料金は下がりにくい可能性があります

賃金側では、2月の所定内給与が前年比3.4%増となった確報があります。賃上げは家計所得を支える一方、企業が購入する派遣、保守、開発、宿泊などの料金にも反映されます。

年度で見ると、2025年度の総平均は前年比2.9%上昇しました。2023年度2.4%、2024年度3.3%に続く上昇です。3月単月の3.1%は年度平均を少し上回りますが、年度全体の流れから大きく外れた異常値ではありません。国際運輸の急騰が月次の加速を作り、国内サービスの基調は2%台後半という二つの時間軸が重なっています。

高人件費率サービスの2025年度前年比は3.2%でした。ここには労働投入の比率が高いサービスがまとまっています。賃金とサービス価格が同時に上がる局面では、価格上昇をすべて悪材料とみなすのも適切ではありません。賃金への還元、生産性、企業利益を合わせて見て、持続可能な価格改定かを判断する必要があります。

年度平均と3月単月も区別したい。2025年度の総平均は前年比2.9%上昇で、年度を通じた平均的な変化を示す。一方、3月の総平均3.1%はその月と前年同月を比べた変化であり、外航貨物輸送の急変を含む。月次の山を年度の基調と呼ぶことも、年度平均だけで月次の急変を見落とすことも避けるべきだ。発表資料が年・年度・四半期・月の系列を並べているのは、比較期間によって見える価格の動きが違うからである。

広告は月次10.0%増でも前年比3.1%

広告の指数は前月比10.0%上がりましたが、前年比は3.1%です。テレビ・ラジオ広告は前月比16.6%、前年比5.4%、インターネット・新聞・雑誌などの広告は前月比6.0%、前年比1.6%でした。

広告は契約時期や需要期による月ごとの振れが大きい分野です。前月比だけで持続的なインフレと断定せず、前年比と複数月の方向を確認する必要があります。不動産も前月比1.2%に対して前年比2.6%で、比較期間によって見え方が変わります。

消費者物価へは直接置き換えられない

企業向けサービス価格は企業間取引の統計です。家計が直接払う外食、家賃、通信料の指数ではありません。ただし、物流、ソフト開発、派遣、建物管理などが上がれば、企業の運営コストを通じて最終価格へ波及する余地があります。

ただし、この統計だけから「何か月後に消費者物価が何%上がる」と計算することはできない。企業は価格を販売先へ転嫁する場合もあれば、利益や業務効率化で吸収する場合もある。企業間のサービス価格と家計が支払う価格は対象品目も契約形態も異なる。企業コストの先行指標として観察する価値はあるが、消費者物価の代替指標ではない。

特にソフトウェア開発、労働者派遣、建物サービスのような分野は、企業の委託費や維持費に表れやすい。これらの上昇が続くかは、単月の前年比だけでなく、前月比、年度平均、総平均への寄与を並べて確認する必要がある。現時点で言えるのは、国際運輸の変動を除いても企業のサービス購入価格に上向きが残っていることまでであり、個別企業の価格改定や家計への転嫁を断定する材料ではない。

4月の国内企業物価4.9%上昇と合わせると、モノの仕入れとサービス調達が同時に重くなっています。家計側の結果は3月の消費者物価で別に確認すべきです。

価格転嫁の持続性を見るポイント

確認したいのは、外航貨物の伸びが落ち着いた後も除く指数が2%台後半を保つか、ソフトウェア・派遣・建物サービスの上昇が複数月続くか、そして高人件費率サービスが3%前後で推移するかです。

3月の3.1%は「サービス全体が同じ速度で値上がりした数字」ではありません。国際運輸の急騰と、国内の人件費・委託費を背景にした粘着的な上昇が重なった結果です。総平均、除く指数、内訳の三段階で追うことで、企業のコスト圧力を過大にも過小にも評価せずに済みます。

次回以降の発表でまず確認したいのは、総平均と「除く国際運輸」の差が縮むか、それでも除く指数が2%台後半を保つかである。次に、道路貨物輸送や高人件費率サービスのように比重のある項目がどう動くかを見る。その順で追えば、目立つ一品目の急騰に引きずられず、企業のサービス調達コストにどの程度の広がりがあるかを確認できる。

価格指数は「上がったか」だけでなく、「どの比較期間で、どの品目が、どの比重で動いたか」を確認して初めて実務的な情報になる。3月分は、その読み分けが必要な典型的な月だった。

データソース

出典・参考資料
トップページへ戻る