2025年の年末賞与は、賞与を支給した事業所で一人平均42万4,889円、前年比2.8%増でした。ただし賞与を支給した事業所は76.5%。全事業所へ広げた参考平均は36万7,529円で、業種差も約10倍あります。

厚生労働省の毎月勤労統計・特別集計によると、事業所規模5人以上の年末賞与は42万4,889円。30人以上では49万695円でした。どちらも前年を上回り、企業が一時金を増やしたことは明るい材料です。

ただし、42万4,889円は全労働者の平均ではありません。賞与を支給した事業所に雇用される常用労働者の平均で、その事業所内で支給されなかった人も含みます。「賞与を支給した事業所」に集計範囲が限定される点が、ニュースの数字と生活実感をずらします

42万4,889円と36万7,529円の違い

賞与を支給した事業所の割合は76.5%、そこに雇われる労働者の割合は86.5%でした。厚労省は平均賞与額に後者を掛けた参考値として、全事業所における一人平均36万7,529円も掲載しています。

2025年年末賞与について支給事業所平均424889円、全事業所参考平均367529円、30人以上支給事業所平均490695円を比較した棒グラフ

支給事業所平均との差は5万7,360円、13.5%です。賞与の水準だけでなく、支給する事業所とそこに雇われる人の広がりを同時に見る必要があります。30人以上では支給事業所割合92.8%、雇用労働者割合94.4%で、規模5人以上全体よりカバー率が高くなっています。

業種差は9万円から94万円まで広がる

支給事業所ベースの業種別平均は、電気・ガス業94万1,438円、情報通信業74万6,758円、金融・保険業67万1,180円、製造業57万1,854円です。一方、飲食サービス業等は9万551円でした。

2025年年末賞与の業種別平均として電気ガス941438円、情報通信746758円、金融保険671180円、製造571854円、飲食サービス等90551円を比較した棒グラフ

最高と最低の差は約10.4倍です。平均42万円という一つの数字では、産業ごとの収益力、雇用形態、所定内給与、賞与制度の違いを隠してしまいます。平均賞与の増加は広い賃上げの証拠ではなく、分布を確認する入口です。

**統計上の賞与:**夏季・年末の呼称にかかわらず、調査期間中に支払われた特別給与を集計します。支給事業所平均と全事業所参考平均を混同しないことが重要です。

前年比2.8%増でも伸びは鈍化

支給事業所平均の年末賞与は2022年3.2%増、2023年0.7%増、2024年2.5%増、2025年2.8%増でした。4年連続でプラスですが、30人以上では2024年4.5%増から2025年2.6%増へ伸びが鈍化しています。

全事業所参考平均は前年比1.9%増で、支給事業所平均の2.8%増より低い伸びです。支給範囲の変化を含めると、見出しほど一律に改善したわけではありません。毎月の基礎的な賃金は所定内給与の記事、物価を差し引いた購買力は実質賃金の記事で確認できます。

賞与増が消費へ回る条件

賞与は住宅修繕、旅行、耐久財などまとまった支出を後押しします。一方、毎月の食費や光熱費が上がり、将来不安が強ければ、増加分は貯蓄や返済へ回ります。一時金は固定給より変動しやすく、家計は恒常的な収入として扱いにくいからです。

消費への波及を決めるのは賞与額だけでなく、固定給の伸び、物価、雇用の安定です。賞与が増えたから消費も同じだけ増える、という直線的な関係ではありません。

次は支給率と業種差が縮むかを見る

今後の確認点は、支給事業所割合76.5%が上がるか、全事業所参考平均の伸びが支給事業所平均へ近づくか、低水準業種でも固定給と一時金が改善するかです。平均額の上昇だけでなく、改善がどこまで広がったかを追う必要があります。

2025年末賞与は、企業の支払い余力が残ることを示しました。同時に、事業所規模と業種による大きな差も示しています。42万4,889円は景気の明るさを測る一つの数字ですが、家計全体の代表値としては36万7,529円や支給率も欠かせません。

平均の上昇を「広がり」に変える条件

賃金改善が広がったかを判断するには、同じ労働者を追う共通事業所の伸び、パート比率、産業別の支給事業所割合も必要です。平均額は高賞与の業種や大規模事業所の構成が変わるだけでも動くため、個々の労働者の増額と完全には一致しません。

支給事業所割合が前年の77.8%から76.5%へ下がる一方、支給事業所の平均額は増えました。これは増額の明るさと、支給の広がりが同じ方向ではなかったことを示します。全事業所参考平均の伸びが1.9%にとどまった理由も、支給範囲を含めて見ると理解しやすくなります。

今後、支給率が戻り、低水準業種の伸びが全体平均を上回れば、賞与改善はより広い家計へ届いたと評価できます。逆に高水準業種だけが伸びるなら、平均額が増えても格差は残ります。

賞与の比較では税・社会保険料を差し引いた手取りも重要です。同じ額面の増加でも、世帯構成や所得水準で使える金額は変わります。消費への効果を測る際は、額面平均だけでなく可処分所得と貯蓄率へ接続します。

企業側から見ると、賞与は固定給より調整しやすい人件費です。業績が良い年に一時金を増やしても、翌年の収益が悪化すれば減らせます。この柔軟性があるため、賞与増だけでは将来所得への安心感が固定給ほど強くなりません。

労働者が増加分を消費へ回すには、翌年も収入が維持されるという見通しが必要です。春季賃上げが所定内給与へ反映され、冬の賞与も続くかを追うことで、一時的な還元と持続的な処遇改善を区別できます。

「支給された職場の平均」と受け取れる範囲は別の数字

特別集計の表2は、賞与額のほかに、支給事業所数割合と、その事業所に雇用される労働者の割合を並べています。調査産業計では、前者が76.5%、後者が86.5%です。事業所数でみれば4分の1近くが年末賞与を支給していない一方、労働者ベースでは賞与支給事業所に属する人の比率の方が高い、という構図になります。

ここでいう86.5%は、賞与を支給した事業所に雇用される常用労働者の割合です。その事業所内で実際には賞与を受け取らなかった労働者も含む、と資料の注記は説明しています。したがって、これは「86.5%の労働者が42万4,889円を受け取った」という個人の受給率ではありません。支給事業所の平均額、事業所の支給率、労働者のカバー率は、役割の異なる三つの指標として扱う必要があります。

全事業所参考平均36万7,529円は、資料が(A)×(C)として示す値です。支給事業所平均42万4,889円との差5万7,360円は、個々人の未受給額を表すものではありません。むしろ、平均額の変化だけでなく、どの範囲の雇用がその賞与水準に含まれているかを同時に確認するための差です。

上昇率が大きい業種と、支給が広い業種は一致しない

業種別では、飲食サービス業等の支給事業所平均は9万551円で前年比8.8%増でした。しかし支給事業所数割合は51.3%、支給事業所に雇用される労働者の割合は64.4%です。増加率だけを取り出すと改善が大きく見えますが、水準と支給の広がりは調査産業計からなお大きく離れています。

反対に、電気・ガス業は94万1,438円と高水準ですが前年比では0.2%減でした。情報通信業は74万6,758円で5.6%増、金融・保険業は67万1,180円で4.7%増、製造業は57万1,854円で2.4%増です。同じ「賞与増」でも、低い水準からの増加、高い水準の維持、支給対象の広がりは別々に起こり得ます

資料には、きまって支給する給与に対する支給割合も載っています。調査産業計は1.08か月分、30人以上は1.22か月分です。この欄も支給事業所ごとに計算した割合の平均であり、個々の契約上の賞与月数そのものではありません。それでも、金額だけでなく月例給与との相対的な大きさを確かめる補助線になります。

次の年末に比較するための基準線

今回の資料では、支給事業所平均は前年比2.8%増、全事業所参考平均は1.9%増です。両者の差があるため、次回の年末賞与を評価するときは、平均額が増えたかだけでは不十分です。支給事業所数割合が76.5%から戻るのか、労働者カバー率が86.5%からどう動くのか、参考平均の伸びが支給事業所平均に追いつくのかを並べる必要があります。

賞与は年1回または年2回の特別給与であり、月々の所得の動きと同じものではありません。今回の統計から確認できるのは、2025年の年末期に賞与を支給した事業所の平均額が増えたことと、支給率・業種別水準に差があることまでです。消費、手取り、翌年の雇用条件までをこの表だけから断定せず、月例賃金や物価の統計と分けて追うことが、数字を過大評価しない読み方になります。

データソース

出典・参考資料
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