2026年2月の現金給与総額は確報で29万8,542円、前年同月比3.4%増でした。所定内給与も3.4%増、実質賃金は2.0%増です。旧記事が使っていた速報値は確報で改定されたため、金額と伸び率を更新し、賃金の中身まで分解します。

厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、2026年2月の現金給与総額は29万8,542円でした。前年同月比は3.4%増です。きまって支給する給与は28万9,452円で3.3%増、そのうち所定内給与は26万9,362円で3.4%増、所定外給与は2万90円で3.0%増でした。

この「前年同月比」は、前年の2月と比べた伸び率であり、前月からいくら増えたかを示す数字ではありません。賞与の支給月や労働時間の違いで月額は振れやすいため、単月の総額をそのまま恒常的な賃上げと読むのではなく、どの給与区分が伸びたのかを分けて見る必要があります。特に家計の毎月の収入に近いのは、賞与などを含む総額よりも所定内給与です。

速報の29万8,341円・3.3%増は、確報で29万8,542円・3.4%増へ改定されています。差は201円ですが、記事で使う値は最新の確報へそろえなければなりません。

29万8,542円を三つに分ける

現金給与総額は、所定内給与26万9,362円、所定外給与2万90円、特別に支払われた給与9,090円で構成されます。所定内給与は基本給や毎月の手当、所定外給与は残業代、特別給与は賞与などに近い区分です。

2026年2月の現金給与総額29万8542円を所定内給与、所定外給与、特別給与に分解した積み上げ棒グラフ

総額の約90.2%を所定内給与が占めます。特別給与は前年比7.5%増と高いものの、金額は総額の3.0%です。家計の継続的な購買力を考えるなら、総額だけでなく比重の大きい所定内給与の伸びが重要です。

**統計の対象:**事業所規模5人以上の労働者1人平均です。個人の手取り額ではなく、税や社会保険料を差し引く前の給与であり、全員が29万8,542円を受け取ったという意味ではありません。

今回の確報は3万3,121事業所を調査対象とし、2万5,522事業所から回答を得ています。回収率は77.1%でした。全事業所・全労働者を数えた悉皆調査ではなく、標本から全体を推計した統計です。月ごとの小さな差を個人の昇給率と同一視せず、改定と複数月の方向を確認します。

また、現金給与総額は税金や社会保険料を引く前の「きまって支給する給与」と特別給与などを足した指標です。可処分所得、世帯収入、年収とは対象が異なります。総額が上がっても、世帯人数、働く人の数、保険料負担、住宅費などが変われば、生活実感が同じ幅で改善するとは限りません。賃金統計は雇用者一人当たりの給与の変化を捉える入口として使い、家計の状態は別の統計で確かめるのが妥当です。

一般労働者とパートでは指標が違う

一般労働者の現金給与総額は38万7,229円で3.9%増、所定内給与は34万6,247円で3.8%増でした。パートタイム労働者の現金給与総額は10万8,967円で1.6%増、所定内給与は10万5,016円で1.6%増です。

パートは月の労働時間が変わるため、月額だけでは単価の変化を読みづらくなります。時間当たり所定内給与は1,443円で4.2%増でした。月額の伸び1.6%より時給の伸びが大きいことから、単価は上がっても労働時間や構成の影響で月額には同じ幅で表れなかったと考えられます。

ここで一般労働者の月額とパートの時間当たり賃金を同列に順位付けすることはできません。前者は月間の給与額、後者は所定内給与を所定内実労働時間で割った単価で、分母が異なるからです。それでも二つを併せて見ることで、フルタイムでは月額、パートでは時間単価という形で、賃金上昇がどこまで広がっているかを確認できます。雇用形態ごとに見ることは、平均値だけでは隠れる差を確かめるための手順です。

2026年2月の現金給与総額、所定内給与、一般労働者の所定内給与、パート時給、実質賃金の前年比を比較したグラフ

実質賃金は2.0%増へ転じた

持家の帰属家賃を除く消費者物価指数で実質化した現金給与総額は、前年同月比2.0%増でした。同じ月の物価指数は1.4%上昇しており、名目賃金3.4%の伸びが物価上昇を上回りました。総合CPIで実質化した参考系列でも2.1%増です。

名目賃金が増えたかではなく、物価を差し引いて購買力が増えたかまで確認して、初めて生活への影響を判断できます。ただし1か月のプラスだけで、長期の実質賃金低下を取り戻したとは言えません。

実質化に使う物価指数には、持家の帰属家賃を除く総合指数と、総合指数の二つの参考系列があります。帰属家賃は、持ち家に住む人が自宅を借りていると仮定したサービス価格を計上する考え方で、実際に毎月支払う家賃と同じものではありません。どの物価指数で実質化したかによって伸び率はわずかに変わるため、記事では名目の3.4%増、持家の帰属家賃を除く系列での2.0%増、総合CPI系列での2.1%増を混同しないことが重要です。

翌3月の動きは実質賃金のプラス転換を検証した記事と、賃上げの広がりを見た記事で確認できます。月ごとに賞与や物価の影響が変わるため、連続性を見ることが重要です。

産業間の差は大きい

現金給与総額の前年比は、金融・保険業10.9%、複合サービス事業6.5%、学術研究等6.2%、運輸・郵便業5.2%でした。一方、飲食サービス業等は1.8%減、電気・ガス業は特別給与の反動もあって7.9%減でした。

平均3.4%増は、どの産業でも同じ賃上げが起きた数字ではありません。賞与の支給時期、労働者構成、労働時間の変化でも産業別の総額は動きます。企業の基本的な賃金設定を見るには、所定内給与と共通事業所系列も併せて確認します。

例えば特別給与の比重が大きい産業では、賞与の支給時期が前年とずれただけでも、月間の現金給与総額の前年比は大きく動きます。反対に所定内給与は毎月の給与に近いぶん、変化は緩やかですが、継続的な賃上げを読む材料になりやすい指標です。産業別の増減は「景気がよい業種・悪い業種」の判定そのものではなく、賃金の内訳と労働時間を確認するための手掛かりとして扱うべきです。

賃上げと人手不足は表裏一体

一般労働者の所定内給与3.8%増とパート時給4.2%増は、雇用形態をまたいで単価が上がったことを示します。背景には春季賃上げだけでなく、採用や定着のために賃金を上げる必要性もあります。

3月の有効求人倍率は求人と求職の需給を示します。倍率が少し下がっても、業種や地域による人手不足が解消したとは限りません。賃金上昇が生産性向上を伴わなければ、企業は販売価格や採用人数で調整する可能性もあります。

家計消費へ届いたかは別統計で見る

2月の実質賃金がプラスでも、家計がすぐ支出を増やすとは限りません。税・社会保険料、将来不安、過去の物価上昇で失った購買力、住宅や教育などの固定費が行動を左右します。

さらに、毎月勤労統計の平均賃金と家計調査の消費支出は、調査対象も集計単位も異なります。片方が改善した月にもう片方が弱くても、直ちに統計が矛盾したことにはなりません。ここで確認したいのは、賃金の改善が消費へつながるまでには時間差や世帯ごとの差があり得るという点です。実質賃金のプラスを消費回復の「必要条件」の一つと見ても、「十分条件」とは言えません。

3月の家計調査では、勤労者世帯の実収入が増える一方、二人以上世帯の消費支出は実質減でした。対象世帯は同一ではありませんが、賃金統計の改善を消費回復と同義にしないための重要な補助線になります。

確報で追うべき三つの数字

今後も確認するのは、所定内給与が物価を上回るか、一般労働者とパートの双方で単価が伸びるか、実質賃金のプラスが複数月続くかです。速報から確報への改定幅も記録します。

2026年2月は「一時金だけで総額が増えた月」ではなく、所定内給与とパート時給がともに伸び、実質賃金もプラスになった月です。ただし、平均値の改善が全産業・全世帯へ均等に届いたわけではありません。確報と内訳を基準に継続性を判断します。

この月の読み方は、総額だけを見て楽観することでも、過去の物価上昇を理由に改善を無視することでもありません。所定内給与、パートの時間当たり給与、実質賃金という性質の異なる三つの指標がそろって上向いたことは確認できる一方、単月の平均値から個々の手取りや消費までを断定する材料にはなりません。次の確報でも同じ方向が続くかを追うことが、賃上げの定着を見極める近道です。

データソース

出典・参考資料
トップページへ戻る