NISAはどこまで広がったのか。金融庁が2026年7月3日に公表した最新調査では、2025年末の口座数は2,820万6,434口座、累計買付額は71兆3,847億円に達した。
数字だけを見れば、日本の資産形成は大きく前進している。ところが同じ調査には、もうひとつ見逃せない数字がある。2025年中の買付額が0円だった口座は、1,044万6,488口座あった。
この記事では、NISAの口座数・買付額・年間利用状況を分けて確認します。口座が増えたことと、継続的に投資する人が増えたことは同じなのかを考えます。
NISAは「制度として普及した」が、「全口座が使われている」わけではない。この二面性が最新統計から見えてくる。

2821万口座、累計買付額は71兆円
NISAの口座数は2014年末の825万口座から、2025年末には2,821万口座へ増えた。11年間で約3.4倍である。累計買付額は3兆円から71兆円へ拡大し、とりわけ新NISAが始まった2024年以降の伸びが大きい。
2024年末と比べると、口座数は2,558万6,460口座から約262万口座増えた。累計買付額は52兆6,360億円から71兆3,847億円へ、1年間で約18兆7,487億円増えている。
この1年の増加額は、2025年末の累計買付額の約4分の1に当たる。もっとも、これは2025年だけに新しく積み立てられた金額だけを意味しない。金融庁の累計値は2014年から2023年までの旧制度と、2024年以降の現行制度の買付額を合算したものだ。制度変更の前後で口座数や枠の条件が違うため、累計額の大きさをそのまま「現在の利用者一人当たりの投資額」に読み替えることはできない。
それでも、口座数が半年間で4.6%増えた一方、買付額の累計が大きく積み上がったことは、制度への参加が新規開設だけで進んだわけではないことを示す。既に口座を持つ人の買付も含め、口座の数と資金の流れは別々に追う必要がある。
政府が掲げた2027年末の累計買付額目標56兆円は、2025年末時点ですでに上回った。一方、口座数の目標3,400万口座には約579万口座届いていない。
それでも1045万口座は、2025年に買付ゼロ
年間の買付額別に見ると、0円だった口座は1,044万6,488口座。集計対象2,855万8,925口座の36.6%を占める。0円超60万円以下は1,010万5,117口座で35.4%。両者を合わせると、72%の口座が年間60万円以下だった。
この72%は「投資に消極的な人の割合」ではない。年間60万円は月平均に均せば5万円であり、少額を定期的に積み立てる利用も、年の途中で始める利用もこの区分に入る。一方で、まとまった資金を一度に投じる口座や、成長投資枠を使う口座は上の区分へ集まる。金額帯の分布は、投資判断の良し悪しではなく、制度の利用規模が一様でないことを表す。
特に注意したいのは、買付額別の表が「2025年中の投資枠の利用状況」を集計しており、年末までに廃止された口座の取引も含む点だ。このため、年末時点の口座数より集計対象が多くなる。年末の口座残高や保有商品の分布を示す表ではなく、その年に枠をどの程度使ったかを示す表として読むのが正確である。

買付額別の集計には2025年中に廃止された口座も含まれるため、年末時点の2,820万6,434口座とは分母が一致しません。また、買付ゼロには「過去に買って保有を続けている口座」も含まれます。休眠口座と断定はできません。
それでも、口座開設数だけを見て「2,821万人が2025年も投資した」と読むのは正確ではない。制度への入口と、その年の実際の利用には1,000万口座規模の差がある。
買付額の78%は成長投資枠だった
2014年から2023年までの旧制度と、2024年以降の現行制度を合わせた累計買付額は、成長投資枠等が55兆6,332億円、つみたて投資枠等が15兆7,515億円だった。合計の約78%が前者、約22%が後者になる。
ここから「多くの人が個別株を選んでいる」とまでは言えない。成長投資枠でも一定の投資信託を買えるからだ。ただし、年間上限が大きい成長投資枠が、金額ベースの拡大を強く押し上げていることはわかる。
NISAの統計は、口座数と人数が完全には一致しません。制度上は一人一口座ですが、金融機関変更や年中廃止を含む集計では、調査時点や表によって口座数が異なることがあります。
最も多いのは50代、若者だけの制度ではない
2025年末の年代別口座数は、50代が553万口座で最多、40代が538万口座、30代が495万口座と続く。60代も418万口座、70代も308万口座あり、NISAは若年層だけの制度ではない。
一方、20代は337万口座、10代は13万口座だった。年代人口そのものが違うため、口座数だけで普及率を比較することはできないが、資産形成の入口が幅広い世代へ広がったことは確認できる。
年代別の口座数を比較するときも、人数そのものと普及率を混同しない。50代の553万口座が最多なのは、世代人口が大きいことに加え、働きながら資金を投じられる期間が長いこととも整合的だろう。ただし、金融庁のこの表だけでは、各世代の人口に対して何割がNISAを使っているか、あるいは世帯の資産がどこまで移ったかまでは分からない。口座数の順位から世代ごとの投資意欲を断定しないことが必要だ。
家計の余力を考えるには、2026年3月の実質賃金や2025年の貯蓄と負債も合わせて見る必要がある。制度があっても、投資へ回せる所得がなければ利用は続かない。
「投資家が増えた」を何で測るか
制度の普及を測るなら口座数が有効だ。市場へ流れた資金の規模を見るなら買付額が必要になる。そして、利用の裾野を知るには、年間の買付有無や金額分布を見るべきだ。
この3つを分けると、現在のNISAはこう整理できる。入口は2,821万口座まで広がり、資金流入は71兆円へ急増した。しかし2025年に買付ゼロの口座も1,045万あり、「口座を作る」から「無理なく使い続ける」までには距離がある。
利用の裾野を考えるときは、年間60万円以下の口座が多いことを「消極的」と決めつけない方がよい。単身世帯の消費低下が示すように、少額利用は家計条件に合わせた継続方法でもありうる。
逆に言えば、NISAの普及を「口座数が増えた」という一つの見出しだけで評価すると、少額で続ける利用、年によって買付を止める利用、過去の保有を維持する利用が見えなくなる。制度の到達度は、口座数・年間の買付額・買付額の分布を重ねて初めて読める。次回以降も、買付ゼロ口座の割合がどう動くかと、60万円以下の層がどの程度継続するかを確認したい。
もう一つ、今回の調査だけでは分からないものがある。買付額が大きい口座ほど長期で保有しているのか、年ごとに売買を繰り返しているのか、あるいは損益がどうなっているのかは、この集計からは判定できない。NISAの制度目的である「安定的な資産形成」まで評価するには、口座数や買付額に加え、保有の継続性や家計の資産・負債との関係を見る別の資料が必要になる。
だからこそ、買付ゼロを失敗、少額を不十分と決めつける読み方も避けたい。生活費、住宅費、教育費、年齢、既に持つ金融資産によって、無理なく続けられる金額は違う。今回の統計が示すのは、制度が大きく広がった一方で、利用の強さには幅があるという事実までだ。その幅を縮めるべきか、少額でも継続できる選択肢として維持すべきかは、統計値とは別の政策判断である。
数字を追う際には、同じ定義・同じ期間で前年や半年前と比較することも欠かせない。集計対象が異なる表を横に並べる場合は、分母の違いを本文に残しておく。
NISAの成果を追うなら、口座数だけでなく、買付ゼロの割合・少額利用層・年代別の継続状況を毎年確認する必要があります。
まとめ
・2025年末のNISAは2,821万口座、累計買付額71.4兆円
・2025年中の買付が0円だった口座は1,045万、集計対象の36.6%
・口座数、買付額、年間利用率はそれぞれ別の指標として読む必要がある
NISAは「一部の人だけの制度」から抜け出しつつある。ただし、本当に投資が生活へ定着したかを判断するには、開設された口座の数より、その後どう使われたかを見る段階に入っている。
データソース:金融庁「NISA口座の利用状況に関する調査結果(2025年12月末時点)」、金融庁「NISA口座の利用状況調査」詳細集計表、金融庁「NISA口座数及び買付額の推移」