観光庁が2026年4月30日に公表した「旅行・観光消費動向調査」2025年年間値(確報)によると、日本人の国内旅行消費額は26兆7,845億円となった。前年比6.5%増、感染拡大前の2019年比でも22.1%増で、同調査の時系列では過去最高である。
ただし、「旅行が以前より大幅に増えた」と読むのは正確ではない。2025年の延べ旅行者数は2019年を下回る一方、1人1回当たりの旅行支出が上がっている。過去最高をつくった中心は、回数の拡大よりも旅行単価の上昇である。
26.8兆円の8割は宿泊旅行
2025年の内訳は、宿泊旅行が21兆7,211億円、日帰り旅行が5兆634億円だった。宿泊旅行は全体の約81%を占め、前年比6.8%増、2019年比26.6%増。日帰り旅行も前年比5.0%増、2019年比6.0%増となり、両方が前年を上回った。
| 年 | 全体 | 宿泊旅行 | 日帰り旅行 |
|---|---|---|---|
| 2019年 | 21兆9,312億円 | 17兆1,560億円 | 4兆7,752億円 |
| 2024年 | 25兆1,536億円 | 20兆3,325億円 | 4兆8,211億円 |
| 2025年 | 26兆7,845億円 (前年比+6.5%) | 21兆7,211億円 (同+6.8%) | 5兆634億円 (同+5.0%) |
出典:観光庁「旅行・観光消費動向調査 2025年年間値(確報)」(2026年4月30日)
宿泊の増加率が日帰りを上回ったため、2019年からの消費額の上積み4兆8,533億円の大半は宿泊旅行による。地域の消費を考える際は、宿泊者数だけでなく、交通、宿泊、飲食、買物、娯楽等サービスを含む旅行支出として捉える必要がある。この調査の「旅行消費額」は、訪日客の消費や日本人の海外旅行分を含まない、日本国内居住者の国内旅行に関する推計値である。
回数は2019年未満、単価は約3割上昇
延べ旅行者数は2025年に5億5,313万人で、2024年比2.4%増だった。しかし2019年の5億8,710万人と比べると5.8%少ない。宿泊旅行は2019年比3.7%減、日帰り旅行は同8.1%減である。
一方、1人1回当たり旅行支出は全体で4万8,424円。2019年の3万7,355円から29.6%増えた。宿泊旅行は7万2,412円で同31.5%増、日帰り旅行は2万円で同15.4%増である。消費額は、おおむね「延べ旅行者数×1回当たり旅行支出」で決まるため、旅行回数がコロナ前に届かなくても、単価の上昇が総額を押し上げうる。
| 区分 | 延べ旅行者数 | 1回当たり旅行支出 |
|---|---|---|
| 国内旅行全体 | 5億8,710万人 → 5億5,313万人 (2019年比-5.8%) | 3万7,355円 → 4万8,424円 (同+29.6%) |
| 宿泊旅行 | 3億1,162万人 → 2億9,997万人 (同-3.7%) | 5万5,054円 → 7万2,412円 (同+31.5%) |
| 日帰り旅行 | 2億7,548万人 → 2億5,316万人 (同-8.1%) | 1万7,334円 → 2万円 (同+15.4%) |
出典:観光庁「旅行・観光消費動向調査 2025年年間値(確報)」(2026年4月30日)。比率は公表値から計算。
「消費額」と「宿泊者数」を混同しない
旅行消費額の増加を、観光地への来訪回数の増加と同一視することはできない。今回の全体の前年比6.5%増は、延べ旅行者数の2.4%増と、旅行単価の3.9%増が重なった結果である。宿泊旅行でも、延べ旅行者数は2.3%増に対して単価は4.4%増だった。
また、金額は名目額であり、物価変動を調整した「実質」の消費量を表す指標ではない。宿泊料金や交通費などの価格上昇があれば、同じ旅行内容でも消費額は増える。したがって、26.8兆円という過去最高は地域に落ちる支出の規模を示す重要な数字だが、旅行者数・宿泊数・実質的なサービス量が全て過去最高だったことを意味しない。
観光庁の調査は、住民基本台帳から無作為抽出した約2万9,000人を対象に、年4回実施する。調査対象や項目、集計方法を踏まえ、訪日客を含む観光消費や施設側の宿泊実績とは別の統計として比較することが重要だ。2025年の国内観光は「より多く旅行した」より、「1回の旅行で使う額が増えた」と読むのが、確報に最も整合的である。