日本政府観光局(JNTO)が2026年8月19日に公表した7月の推計値によると、訪日外客数は344万2,100人、前年同月比0.1%増だった。7月として過去最高だが、前年からの増加は4,982人にとどまる。総数だけを見れば横ばいに近い。
しかし市場別に分けると、夏の需要は一様ではない。台湾が76万3,800人で単月過去最高、初めて70万人を超えた。韓国も89万4,700人へ31.9%増となった一方、中国は42万8,200人で56.1%減である。大きな増加と大きな減少が同じ月に重なり、総数の小さな伸びに見えている。
総数は「過去最高」、伸び率は0.1%
2025年7月の343万7,118人と比べ、2026年7月は344万2,100人だった。7月単月を前年同月と比べる数字であり、旅行消費額や宿泊者数ではない。JNTOの2026年値は推計値、2025年値は確定値である点にも注意がいる。
2025年7月(確定値) 3,437,118人 ████████████████████
2026年7月(推計値) 3,442,100人 ████████████████████ +4,982人(+0.1%)
1〜7月累計は2,452万7,200人で、前年同期比1.7%減だった。7月だけが前年をわずかに上回っても、年初からの合計が同じ方向に動いているとは限らない。月次を年計の勢いと読み替えないことが必要だ。
東アジアの構成が大きく入れ替わった
7月の最大市場は韓国の89万4,700人、次いで台湾の76万3,800人、中国の42万8,200人だった。総数に占める比率を単純計算すると、韓国は約26.0%、台湾は約22.2%、中国は約12.4%となる。前年7月には中国が97万4,564人で最大だったため、上位市場の顔ぶれと構成は大きく変わった。
韓国 2025年 678,566人 → 2026年 894,700人 +31.9%
台湾 2025年 604,177人 → 2026年 763,800人 +26.4%(単月過去最高)
中国 2025年 974,564人 → 2026年 428,200人 -56.1%
香港 2025年 176,019人 → 2026年 272,500人 +54.8%
人数の差で見ると、韓国は21万6,134人、台湾は15万9,623人、香港は9万6,481人増えた。これらの増加は、中国の54万6,364人減をかなりの程度埋めたが、完全には相殺していない。総数がほぼ変わらないという結果は、需要が均等に安定したことではなく、市場間の振れが相殺した結果と読むのが適切だ。
JNTOは、韓国では追加祝日による3連休やスクールホリデー、航空座席数の増加を、台湾ではスクールホリデー、座席増、クルーズ船寄港などを増加要因として挙げた。中国については、渡航を避けるよう注意喚起があったことや航空便減便の影響を記している。これらはJNTOによる市場概況であり、単一の要因だけで人数の変化を説明するものではない。
夏季需要は東アジアだけではない
東南アジアでは、タイが5万3,800人(10.8%増)、マレーシアが2万3,800人(31.4%増)だった一方、フィリピンは4万5,100人(4.8%減)、ベトナムは5万2,100人(2.7%減)だった。夏場は一部の東南アジア市場で訪日需要が落ち着く時期だとJNTOは説明する。同じ地域でも増減が分かれている。
欧米豪・中東では、米国が28万6,200人(3.3%増)、フランスが5万700人(9.7%増)、中東地域が2万8,200人(41.0%増)となった。韓国、台湾、シンガポール、マレーシア、インドネシア、米国、フランスなどを含む17市場は、それぞれ7月として過去最高だった。ただし「17市場で過去最高」は各市場の7月実績の比較であり、全市場が増えた、または年間累計が最高という意味ではない。
この統計で分かること、分からないこと
訪日外客数は、法務省の出入国管理統計を基にJNTOが算出する入国者数の指標である。日本を主たる居住国とする永住者等を除く一方、駐在員や家族、留学生などの入国・再入国者は含む。乗員は含まれない。したがって、これは国籍・地域別の「旅行消費額」や「純粋な観光客数」と同義ではない。
地域の混雑、宿泊需要、消費額への影響を考える際は、この人数統計だけで結論を急がない方がよい。宿泊旅行統計、訪日外国人消費動向調査、地域別の宿泊実績など、対象と公表時期の異なる統計との照合が必要になる。今回の数字が示す確かな変化は、訪日需要の総量が横ばいでも、夏季の需要源は中国から韓国・台湾などへ大きく組み替わったことだ。