国土交通省が2026年8月31日に公表した「建築着工統計調査報告(令和8年7月分)」によると、7月の新設住宅着工は6万6,439戸、前年同月比8.2%増だった。増加は4か月連続である。

しかし、同省が9月10日に公表した「建設工事受注動態統計調査報告(令和8年7月分)」では、建設業者の元請受注高は7兆1,398億円、同1.4%減だった。二つの数字だけを見ると「住宅は増えたのに建設は弱い」という印象になる。だが、これは矛盾というより、統計が捉える時点と対象の違いを映している。

図表1 2026年7月の二つの建設指標(前年同月比)
指標実数前年同月比単位・対象
新設住宅着工66,439+8.2%戸数
受注高合計10兆9,346億円+2.9%元請+下請
元請受注高7兆1,398億円−1.4%公共・民間等からの受注
下請受注高3兆7,948億円+12.3%2次下請以下を含む

出典:国土交通省「建築着工統計調査報告(令和8年7月分)」(2026年8月31日)、「建設工事受注動態統計調査報告(令和8年7月分)」(2026年9月10日)

着工の増加を支えたのは貸家と分譲住宅

利用関係別にみると、貸家は3万164戸で前年同月比10.0%増、分譲住宅は1万8,208戸で同14.6%増だった。分譲住宅の内訳ではマンションが7,448戸、同24.7%増と大きく伸び、一戸建住宅も1万578戸、同9.0%増である。持家は1万7,730戸、同0.4%増にとどまった。

つまり7月の住宅着工全体の増加は、主に賃貸用と分譲用の供給によるものだ。持家の小幅増だけを根拠に、自己居住用住宅の需要が強く回復したと読むのは適切ではない。

図表2 新設住宅着工の利用関係別内訳
利用関係着工戸数前年同月比
持家17,730戸+0.4%
貸家30,164戸+10.0%
分譲住宅18,208戸+14.6%
うちマンション7,448戸+24.7%
うち一戸建住宅10,578戸+9.0%

出典:国土交通省「建築着工統計調査報告(令和8年7月分)」(2026年8月31日)

「いつ」「何を」数えるかが異なる

住宅着工統計は、全国で実際に工事が着手された新設住宅を戸数で捉える。対して建設工事受注動態統計は、建設業許可業者約48万業者から抽出した約1万2千業者を対象に、毎月の受注額を発注者別、業種別、工事種類別などで把握する調査だ。前者は工事の開始、後者は契約・受注という異なる段階であり、単位も戸数と金額で違う。

さらに、受注高合計の増加を元請の改善と取り違えてはいけない。7月は元請が減少する一方、下請が増えたため、合計では2.9%増となった。合計の増加は、発注者から直接受ける仕事が増えたことを意味しない。

元請受注高を発注者別にみると、公共機関からは2兆1,428億円で前年同月比0.9%減、民間等からは4兆9,969億円で同1.6%減だった。両方が前年同月を下回った一方、元請の建築工事は4兆5,000億円、同3.0%増である。土木工事の増減や機械装置等工事の23.0%減、業種別構成も、元請全体の結果に影響する。

住宅関連の受注額とも一対一ではない

民間等からの建築工事・建築設備工事(1件5億円以上)は1兆3,972億円、前年同月比22.1%増だった。このうち工事種類別の「住宅」は2,360億円で、工場・発電所4,063億円、事務所2,491億円に続く規模だった。不動産業による「住宅」の受注は1,518億円である。

ただし、この「住宅」受注額を新設住宅着工6万6,439戸と割って戸当たり金額を出すことはできない。民間等の建築工事・建築設備工事は1件5億円以上に限られ、住宅着工統計は全国の着工を対象とするため、分母と対象範囲が一致しないからだ。

今回の分岐は、住宅供給の着工が貸家・分譲を中心に増えたことと、建設業全体では元請段階の受注が公共・民間等とも減ったことが同時に起きた結果である。住宅着工、元請受注、下請受注を同じ「建設の景気」として一本化せず、戸数・金額・契約段階を分けて比べる必要がある。月ごとの大口案件にも左右されやすいため、今後は利用関係別の着工と、元請・下請別の受注の推移を継続して確認したい。

出典・参考資料
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