総務省統計局が2026年9月20日に公表した「統計からみた我が国の高齢者」によると、9月15日現在の65歳以上人口は3,624万人、総人口に占める割合は29.6%だった。割合は過去最高である。一方、2025年平均の65歳以上就業者は943万人で、こちらも過去最多となった。
二つの数字はいずれも重要だが、同じ分母でも同じ時点でもない。前者は2026年9月15日現在の人口、後者は2025年1~12月の年平均の就業者である。高齢化は人口構成の変化であり、高齢者の就業拡大は働く人の行動と雇用の変化である。「高齢者が増えた」ことだけから「高齢者がより働くようになった」とは結論づけられない。
人口比29.6%と、就業者比13.8%は分母が違う
人口の29.6%は、総人口に占める65歳以上人口の割合である。これに対し13.8%は、15歳以上の就業者総数6,828万人に占める65歳以上就業者943万人の割合で、就業者のおよそ7人に1人に当たる。比較する際には「人口全体の年齢構成」と「働いている人の年齢構成」を分ける必要がある。
| 指標 | 数値 | 分母・対象時点 |
|---|---|---|
| 65歳以上人口の割合 | 29.6% | 総人口1億2,262万人、2026年9月15日現在 |
| 65歳以上就業者の割合 | 13.8% | 就業者総数6,828万人、2025年平均 |
| 65歳以上の就業率 | 26.0% | 65歳以上人口に占める65歳以上就業者、2025年平均 |
出典:総務省統計局「統計トピックスNo.149」(2026年9月20日)、「労働力調査(基本集計)2025年平均結果の概要」(2026年1月30日公表)
就業率は、年齢構成の違いをひとまず取り除き、「その年齢層の何割が就業者か」を示す指標だ。65歳以上全体では2025年に26.0%で、前年から0.3ポイント上昇した。2015年との比較では4.3ポイント上昇している。65歳以上人口が増えたことに加え、その中で働く割合も上がったため、就業者数の増加につながっている。
就業の広がりは65~69歳だけではない
年齢階級別では、65~69歳の就業率が54.5%、70~74歳が36.2%、75歳以上が12.6%。いずれも比較可能な範囲で過去最高となった。もっとも、数値の差が示す通り、就業の広がりを「高齢者」という一括りで見ると実態を見失う。65歳を過ぎても働くことは珍しくない一方、年齢が上がるにつれて就業率は大きく低下する。
| 年齢階級 | 就業率 | 読み取るポイント |
|---|---|---|
| 65~69歳 | 54.5% | 半数を超える |
| 70~74歳 | 36.2% | 3人に1人超 |
| 75歳以上 | 12.6% | 1割強 |
出典:総務省統計局「統計トピックスNo.149」(2026年9月20日)。就業率は各年齢階級の人口に占める就業者の割合。
統計上の「就業者」は、月末1週間に収入を伴う仕事を1時間以上した人に加え、仕事を休んでいた人を含む。したがって就業率は、フルタイムで働く人の比率や生活費を賄える仕事の比率を直接示すものではない。この定義は、働き方の量や所得を読み込む際の注意点になる。
76.1%は「高齢者全員」の非正規比率ではない
65歳以上就業者943万人の内訳は、役員を除く雇用者586万人(62.7%)、自営業主・家族従業者239万人(25.6%)、会社などの役員109万人(11.7%)である。このうち雇用形態を判定できるのは、役員を除く雇用者である。
この586万人のうち、正規の職員・従業員は140万人(23.9%)、非正規の職員・従業員は446万人(76.1%)だった。非正規の内訳ではパート・アルバイトが309万人で、役員を除く高齢雇用者の52.7%を占める。
| 区分 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 役員を除く雇用者 | 586万人 | 高齢就業者の62.7% |
| 自営業主・家族従業者 | 239万人 | 同25.6% |
| 会社などの役員 | 109万人 | 同11.7% |
| (雇用者内)非正規の職員・従業員 | 446万人 | 役員を除く雇用者の76.1% |
| (雇用者内)正規の職員・従業員 | 140万人 | 役員を除く雇用者の23.9% |
出典:総務省統計局「統計トピックスNo.149」(2026年9月20日)。非正規比率の分母は「65歳以上の役員を除く雇用者」であり、943万人の全就業者ではない。
ここで76.1%を「65歳以上の4人に3人が非正規」と読むのは正確ではない。自営業主・家族従業者や役員を分母から除いた比率だからである。反対に、非正規比率が高いことだけから不安定な働き方が増えたと断定することもできない。就業時間、賃金、本人が仕事を選んだ理由、継続意向はこの数値だけでは分からない。
ただし構造変化は明瞭だ。2015年から2025年にかけて、65歳以上の役員を除く雇用者では正規が47万人増えたのに対し、非正規は178万人増えた。高齢者の就業拡大は、就業者数の増加であると同時に、非正規雇用を中心に雇用者が増えた変化でもある。
人口の高齢化を測るなら人口比、労働供給への参加を見るなら年齢別就業率、雇用の質や働き方を考えるなら雇用形態と就業時間・所得を、それぞれ別の分母で追う必要がある。943万人という過去最多は重要な到達点だが、そこから先の問いは「何人働くか」だけではない。どの年齢で、どの立場で、どのような条件で働くのかを見て初めて、高齢者就業の中身が見えてくる。