日本の研究費は、2024年度に23兆7,925億円となった。総務省統計局が2025年12月12日に公表した「2025年科学技術研究調査・結果の要約」によると、前年度比7.9%増で、4年連続の増加、過去最高だった。

ただし、同日公表の「結果の概要」に載る実質研究費は4.5%増である。研究費は物価変動を除いても増えたが、支払った金額の伸びほどには拡大していない。さらに、企業、大学等、非営利団体・公的機関では増加率が違う。総額の記録を、すべての研究現場に共通する変化として読むことはできない。総務省統計局「結果の要約」、「結果の概要」

「2025年調査」が測ったのは2024年度の支出

まず、調査年と対象年度を区別したい。今回の調査は2025年6月1日に実施されたが、研究費は2024年度の実績である。2025年度の研究予算や、2026年現在の支出を示す数字ではない。

統計局の「2025年科学技術研究調査・調査の概要」では、財務事項の対象期間を3月31日またはその直近の決算日から遡る1年間としている。研究費を比較するときは、この期間にそろえる必要がある。この記事は2025年12月12日公表の調査結果を使い、速報としては扱わない。実質研究費には資料に従って「参考値」と明記する。総務省統計局「調査の概要」

名目と実質は、価格条件を変えた比較

名目研究費は、その年度の価格で集計した金額だ。一方、実質研究費は、賃金水準などの物価変動を調整した参考値で、2020年度を基準にしている。

図表1 名目・実質研究費の比較(2023年度と2024年度)
指標・価格条件2023年度2024年度2024年度の前年度比
名目研究費・各年度の価格22兆497億円23兆7,925億円7.9%増
参考:実質研究費・2020年度基準19兆5,608億円20兆4,490億円4.5%増

出典:総務省統計局「結果の概要」表1-1、2025年12月12日公表。増加率はそれぞれ同じ価格条件の前年度額と比較した値。

図表1の出典:総務省統計局「結果の概要」

実質額は、企業、非営利団体・公的機関、大学等それぞれの研究費を、物価変動を表す係数で調整してから合計する。家計の消費者物価指数を総額に一律に当てはめた数字ではない。

7.9%と4.5%の差は3.4ポイントだが、これをそのまま「研究費の物価上昇率3.4%」と呼ぶのは適切ではない。増加率の差と、価格変動率は計算上同じではない。また、名目額と実質額の差額には基準年度からの価格変動が反映されるため、その差額を2024年度だけの値上がり負担とみなすこともできない。

実質4.5%増は、価格調整後にも支出の拡大が残ることを示す。ただし、実験の回数や研究の質が4.5%向上したという意味ではない。

伸び率が最大の主体と、総額を動かす主体は違う

主体別では、非営利団体・公的機関が16.0%増と最も高い。企業は8.1%増、大学等は2.9%増だった。これらはすべて名目の前年度比であり、実質総額の4.5%増とは比較条件が異なる。

図表2 研究主体別の名目研究費(2024年度)
研究主体研究費前年度比総額に占める割合
企業17兆4,303億円8.1%増73.3%
大学等4兆496億円2.9%増17.0%
非営利団体・公的機関2兆3,126億円16.0%増9.7%

出典:総務省統計局「結果の要約」「結果の概要」表1-3、2025年12月12日公表。割合の分母は2024年度の研究費総額。増加率は各主体の前年度額が分母。

図表2の出典:総務省統計局「結果の概要」

企業は総額の7割以上を占める。したがって、企業の支出が増えると、日本全体の研究費にも大きく響く。一方、公的機関などは伸び率が高くても、総額に占める規模は企業より小さい。増加率の順位だけで、全体の拡大を主導した主体を判断しないことが大切だ。

大学等も名目額は増えている。ただし、企業や公的機関などより伸びが緩やかなので、全体に占める割合は小さくなる。これは大学等の研究費が減少したこととは区別すべき変化である。また、大学等の2.9%増だけから、価格調整後の増減までは判断できない。

企業と大学では、研究費の役割も異なる

主体間の比較には、研究の性格も関わる。「結果の要約」によると、2024年度の自然科学に使用した研究費のうち、企業では開発研究が77.8%を占める。一方、大学等では基礎研究が53.1%で最多だった。

ここでの分母は、各主体が自然科学に使用した研究費である。図表2の研究費総額とは範囲が違う。この割合を、人文・社会科学も含む大学等の研究費全体の内訳として使うことはできない。総務省統計局「結果の要約」

研究の性格が違えば、成果の現れ方や評価する時間軸も違うと考えられる。これは数字を読む際の視点であり、今回の調査が成果の優劣を測ったという意味ではない。大学等の伸び率が企業より低いことを、そのまま研究能力の差に置き換える根拠はない。

今回確認できるのは、名目・実質とも研究費が増え、その増え方が主体によって異なることだ。支出の拡大が論文、技術、製品、生産性にどう結び付いたかを判断するには、成果を測る別の資料と、支出から成果までの時間差を確かめる必要がある。

出典・参考資料
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