保育所に空きが増えているのに、入れない子どもも増える。2026年4月1日の全国集計では、この二つが同時に起きた。定員充足率は87.7%へ低下し、待機児童は2,435人に増えた。
全国の定員と利用児童の差は、希望する地域・年齢・時期に入所できる枠の数を示していない。この違いを押さえると、空きと不足が併存する理由が見えてくる。こども家庭庁が2026年8月28日に公表した「保育所等関連状況取りまとめ」は、熊本県内のデータが地震の影響で未確定のため、各種データを暫定値としている。以下も同公表時点の値であり、今後修正される可能性がある。こども家庭庁・2026年取りまとめ全体版
利用児童は定員より速く減った
対象は認可保育所だけでなく、認定こども園や地域型保育事業などの保育利用分を含む。「定員充足率」の分母は利用定員、分子は利用児童数であり、地域の子どものうち何割が保育を利用するかを表す割合とは異なる。こども家庭庁・調査の対象
| 指標 | 2025年4月1日 | 2026年4月1日・暫定値 | 前年差 |
|---|---|---|---|
| 利用定員 | 3,029,282人 | 3,016,417人 | 12,865人減 |
| 利用児童数 | 2,678,417人 | 2,646,756人 | 31,661人減 |
| 定員充足率 | 88.4% | 87.7% | 0.7ポイント低下 |
| 待機児童数 | 2,254人 | 2,435人 | 181人増 |
出典:こども家庭庁の2025年版、2026年8月28日公表の2026年版。各年4月1日の比較。充足率の差は公表された小数第1位の値による。
定員の減少より利用児童の減少が大きいため、充足率は下がった。単純に引き算すると定員と利用児童の差は350,865人から369,661人へ、18,796人分広がる。これは掲載値からの計算であり、実際に募集している空き枠の集計ではない。
全国で受け皿に余裕が生じても、その余裕が必要な場所にあるとは限らない。通園できる範囲を越えた定員を、近所の入所希望者にそのまま割り当てることはできないからだ。
都市部と過疎地域では課題が違う
| 地域区分 | 2025年4月1日 | 2026年4月1日・暫定値 | 前年差 |
|---|---|---|---|
| 全国 | 88.4% | 87.7% | 0.7ポイント低下 |
| 都市部・重複調整後 | 91.3% | 90.9% | 0.4ポイント低下 |
| 過疎地域・全部過疎市町村 | 74.6% | 72.7% | 1.9ポイント低下 |
出典:こども家庭庁、2026年8月28日公表、全体版18ページ。分母は各区分の利用定員、分子は利用児童数。二つの地域区分だけで全国を網羅するものではない。
ここでの都市部は首都圏・近畿圏の7都府県とその他の指定都市・中核市を基本とする。ただし、全部過疎市町村にも該当する自治体は過疎地域へ計上する。この重複調整により、同資料の待機児童の都市部集計とは範囲が一部異なる。こども家庭庁・地域区分の定義
都市部では入所需要への対応、過疎地域では利用者が減る中で保育機能を維持することが課題になる。黄川田大臣も2026年8月28日の会見で、申込みの想定以上の増加や保育人材の確保を地域ごとの課題として挙げた。一方、過疎地域では計画的な提供体制の整備や多機能化を進める方針を示している。内閣府・大臣会見要旨
充足率の低さだけで施設の必要性を判断すると、通園距離や地域に残る保育機能を見落とす。同じ率の低下でも、受入れの余裕が増えたのか、サービスの維持が難しくなったのかを分けて考える必要がある。
全国の181人増を都道府県に分ける
| 地域 | 2025年4月1日 | 2026年4月1日・暫定値 | 前年差 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 339人 | 1,113人 | 774人増 |
| 滋賀県 | 335人 | 102人 | 233人減 |
| 神奈川県 | 138人 | 65人 | 73人減 |
| 東京都以外の合計・掲載値から計算 | 1,915人 | 1,322人 | 593人減 |
出典:こども家庭庁、2026年8月28日公表、全体版11ページ。東京都以外の合計には滋賀県・神奈川県も含む。
東京の増加と、それ以外の合計の減少を合わせると全国の181人増になる。全国の増加を各地共通の悪化と読むことはできない。こども家庭庁・都道府県別待機児童数
大臣会見では、都内自治体から第一子保育料無償化の影響を考える声があったことも紹介された。ただし、これは自治体への聞き取りで示された可能性であり、無償化だけで増加を説明する因果関係が確定したわけではない。内閣府・2026年8月28日会見
待機児童ゼロと、希望どおりの入所は別
こども家庭庁が2026年4月1日に更新した「基礎資料(待機児童対策)」は、集計から除外する4類型を説明している。地方単独保育施策の利用者、特定の園だけを希望する者、求職活動を休止している者、育児休業中の者だ。ただし、それぞれ確認条件がある。
育休中でも入園できれば復職する意向が確認できる場合は待機児童に含む。特定園希望も、申請書の希望園だけで一律に除外せず、利用可能な他園の情報提供と保護者の意向確認を行う扱いである。特例保育等の利用者も別に整理されるため、申込者数から利用児童数を引いた人数が、そのまま待機児童数になるわけではない。こども家庭庁・基礎資料の集計定義
4月の空きには時間の意味もある
2026年の全体版は、年度途中の入所に対応するため4月時点で空きを設けている園もあると注意を促す。その空きをすべて恒常的な余剰と見ると、その後の受入れに必要な余地まで数えてしまう。こども家庭庁・定員充足率の留意点
福井市の2026年度途中入園案内も、受入可能枠が月ごとに埋まり、年度後半ほど案内が難しくなると説明している。2026年1月7日更新のこの案内は、一年の需給を4月の断面だけでは判断できない具体例だ。福井市・途中入園手続き
地域の入所難を確かめるには、全国の充足率に加えて、通園範囲、年齢別の募集枠、入所希望月、実際の受入体制を見る必要がある。子ども人口の減少は全国の需要を考える背景になるが、個々の地域で保育が足りることまでは保証しない。- https://www.cfa.go.jp/policies/hoiku/torimatome/r8
- https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/68234dca-5d01-4ec2-ac2f-86f598c55b5c/faf00807/20260825_%20policies_hoiku_torimatome_r%EF%BC%98_03.pdf
- https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/b0a8057b-34bf-4c20-84fb-ae592708ca9b/c853cacb/20250828_policies_hoiku_torimatome_r7_01.pdf
- https://www.cao.go.jp/minister/2602_h_kikawada/20260828kaiken.html
- https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/701f368a/20260401_policies_hoiku_204.pdf
- https://www.city.fukui.lg.jp/fukusi/kosodate/hoikuen/p071070.html