総務省統計局が2026年8月28日に公表した「令和6年全国家計構造調査」によると、総世帯の金融資産残高(2024年10月末)は平均1,527.2万円だった。2019年の1,279.7万円から247.5万円、19.3%増えている。一方、金融資産を保有する世帯に限った中央値は728万円で、平均の半分に届かない。
平均の上昇を、そのまま「典型的な世帯の資産が同じ幅で増えた」と読むことはできない。 資産の分布、比較する母集団、年齢構成を分けてみる必要がある。平均1,527万円と中央値728万円は、同じ分母ではない
2024年の平均1,527.2万円は、金融資産残高が0円の世帯も含む「総世帯」1世帯当たりの値である。これに対し728万円は、0円の世帯を除いた金融資産保有世帯を小さい順に並べた中央の値だ。0円を含む総世帯の参考中央値は600万円である。
2019年は平均1,279.7万円、保有世帯の中央値650万円だった。平均とこの中央値の差は629.7万円から799.2万円へ169.5万円広がった。ただし両者は分母が異なるため、これは厳密な格差指標ではない。それでも、上方に長い資産分布を平均だけで代表させる難しさを示す比較にはなる。
| 年 | 平均値 (0円世帯を含む) | 保有世帯中央値 (0円世帯を除く) | 差 |
|---|---|---|---|
| 2019年 | 1,279.7 | 650 | 629.7 |
| 2024年 | 1,527.2 | 728 | 799.2 |
| 増減 | +247.5(+19.3%) | +78 | +169.5 |
注:中央値は金融資産保有世帯の値。差は平均値-保有世帯中央値であり、母集団が異なる記述的な比較。出典:総務省統計局「2019年・令和6年全国家計構造調査 家計資産・負債に関する結果」(2021年5月18日、2026年8月28日公表)
資産階級でみても、分布は低額側に厚い。2024年は150万円未満が総世帯の25.7%で最多、150万~300万円未満が9.1%、300万~450万円未満が8.2%だった。2019年の各割合は27.4%、9.8%、8.8%であり、最初の三階級の合計は46.0%から43.0%へ3.0ポイント下がった。一方で、7,500万円以上は2.1%から3.3%へ上昇した。
この変化だけから各世帯の資産形成の成否を決めることはできないが、平均上昇の背後では、低額資産の層がなお大きく、高額層の比重も高まっていることが分かる。
| 資産階級 | 2019年 | 2024年 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 150万円未満 | 27.4 | 25.7 | -1.7ポイント |
| 150万~300万円未満 | 9.8 | 9.1 | -0.7ポイント |
| 300万~450万円未満 | 8.8 | 8.2 | -0.6ポイント |
| 7,500万円以上 | 2.1 | 3.3 | +1.2ポイント |
注:各年の区分は金融資産残高。図表の全階級を足した構成比ではなく、比較可能な代表階級を抜粋した。出典:総務省統計局「2019年・令和6年全国家計構造調査 家計資産・負債に関する結果」(2021年5月18日、2026年8月28日公表)
増加の中心は有価証券、全世代で構成比が上昇
金融資産の内訳では、預貯金が918.8万円、生命保険などが244.1万円、有価証券が347.8万円、その他が16.5万円だった。2019年からの増加額247.5万円のうち、有価証券の増加は143.3万円で最も大きい。2024年には有価証券が金融資産全体の22.8%を占め、2019年の16.0%から6.8ポイント上昇した。
年齢別にみると、金融資産残高は60歳代が2,336.5万円で最も多い。30歳未満は315.7万円で水準は低いものの、2019年比62.1%増と伸び率が最も大きい。30歳未満では有価証券の構成比が7.7%から24.9%へ17.2ポイント上昇し、特に投資信託は2.3%から13.5%へ11.2ポイント上昇した。全ての年齢階級で有価証券の割合は上がり、預貯金と生命保険などの割合は下がった。
| 世帯主年齢 | 年間収入 | 金融資産残高 (平均、0円世帯を含む) |
|---|---|---|
| 30歳未満 | 460.2 | 315.7 |
| 30歳代 | 633.7 | 751.0 |
| 40歳代 | 754.5 | 1,137.0 |
| 50歳代 | 778.7 | 1,636.7 |
| 60歳代 | 612.4 | 2,336.5 |
| 70歳代 | 459.9 | 2,006.1 |
| 80歳以上 | 366.1 | 1,782.2 |
注:年間収入は2023年11月~2024年10月の税込みの経常的収入。金融資産は2024年10月末現在。出典:総務省統計局「令和6年全国家計構造調査 結果の要約」(2026年8月28日公表)
収入のピークと資産のピークは一致しない
総世帯の年間収入は593.7万円で、2019年の558.4万円から6.3%増えた。年齢別では50歳代の778.7万円がピークだが、金融資産のピークは60歳代である。収入が高い時期と、資産残高が最大となる時期は同じではない。
ここでの年間収入は、勤め先収入、事業・内職収入、年金や給付金などを含む税込みの年間フローであり、退職金や資産売却、相続などの一時的収入は含まない。金融資産は10月末時点の残高というストックである。「収入が増えた」ことと「資産が増えた」ことを同じ指標として扱わないことが、家計統計を読む出発点になる。
今回の調査は約9.2万世帯規模の所得資産集計体系による標本調査で、結果には標本誤差がある。また、総世帯には単身世帯を含み、金融資産には預貯金だけでなく株式・債券・投資信託なども含まれる。平均額のニュースを自分の家計の基準に置くより、中央値、階級別の割合、年齢と世帯構成という三つの物差しを併読する方が、実態に近づきやすい。